「輪行(りんこう)」とは、「自転車を分解して専用の袋に入れて、交通機関に乗せて移動する」こと。
これを習得することにより、サイクリングの幅が劇的に広がります。そもそも自転車で走ることそのものを楽しむ場合、玄関から一歩出ればすべてがフィールドですが自宅の周りがすべて走りやすい場所とも限りません。もっともっと遠くに行きたくっても、自力で走っていくには限界があります。
車に自転車に積んで、目的地まで移動し、そこでサイクリングを楽しむという方法もあります。しかしそこには数々の制約があります。
まず、スタートとゴールが必ず同じでなければいけません。次に旅先でおいしい食事にであっても、アルコールを飲むことができません。複数人で出かける場合、都合よく飲酒しない人がいれば別ですが、そううまくはいきません。
輪行の場合、スタートとゴールが違ってもまったく問題ありません。むしろそうするべきです。それにより同じコースを往復するというコース設定が必要なくなり、まったくもってコース設定が自由になります。
たとえば、行きだけ走って、帰りは輪行。逆に、行きは輪行で、帰りに走るというコース設定も可能です。1日で100キロ走れる人の場合、すべて自走で行う場合、50キロ先にまでしか走っていくことができませんが、行きか帰りのどちらかを輪行することで、100キロ先まで走っていくことができるのです。
また上り坂が苦手な人がいたとします。その場合、その坂道区間だけ輪行してしまうというのもアリです。
つまり、「輪行することで、地形を自由に選んで走ることができる」それが輪行の醍醐味であり、せっかく自転車を楽しみたいなら、絶対に身に着けておきたいスキルの一つです。
それでは実際に輪行の手順を見ていきましょう。輪行スキルを身に着ける前に、前後輪の着脱方法を習得してください。輪行とは直接関係はありませんが、遠くまで走りに行くということでのリスク管理として、パンク修理、タイヤ・チューブの交換が自らできるというのも、必須です。
輪行場所を見つけて、前後輪を外す。
駅に着いたら、輪行するのに適した場所を探しましょう。壁際がベストですが、朝夕の通勤時間帯の、その駅のメインとなる階段近くは避けたほうがよいでしょう。また、駅の床は酔っ払いたちの****によって汚れている場合がありますので、注意が必要です。
前後輪を外すため、駅に着いた時点で、ギアは「アウター x ロー」にしておきましょう。常に次の作業の準備をしながら、ことを運ぶのがコツです。
輪行中にダメージを受けてしまわないように、ハンドル周りの電気系パーツ(ライト・スピードメーター等)は外しておきましょう。
前後輪を外してから、フレームをこんな風にさかさまにします。
※前後輪をつけたまま逆さまにして、それから前後輪を外すという方法もありますが、それだと重たいですよ。車輪を外してからのほうが、軽いでしょう。
エンド金具を取り付ける。
輪行独特のパーツ、エンド金具を取り付けます。(ロードバイクはエンド幅130mm、マウンテンバイクはエンド幅135mm、クロスバイクの場合はエンド幅135mmがほとんどですがものによっては130mmのものもありますので、現物で確認を)
エンド金具とは、自転車の中でも最もデリケートなパーツ「リアディレイラー」が輪行袋の中で字面と接する部分になるため、それを保護するためのパーツです。持ち運びが楽なように、軽量・コンパクトにできており、過度な強度・耐久性はありません。取り扱いは易しく、丁寧に。
使い方は、後輪に付いていたクイックレバーを外して、このように取り付けます。途中チェーンを介することで、輪行袋の中でチェーンがたるみにくくなり、フロントギアから外れにくくなります。
慣れればなんということない簡単なものですが、最初の数回はとても難しいと思います。まずは最低5回は付け外しを練習してみてください。
オーストリッチのエンド金具を購入すると、リア用クイックレバーが付属しますが、もともと後車輪についているクイックレバーを使用すれば、多少なりとも荷物が少なく済みます。
エンド金具をクイックレバーを固定する時は、そこそこ強めにしてください。いくら強く固定しても、エンド金具は動いてしまいますので。
前後輪でフレームをはさみ、ストラップで3か所を固定する。
一見簡単そうに見えますが、ここはかなりポイントです。下の画像の矢印の部分(3か所)を輪行袋に付属のストラップで固定します。固定する順番があります。まず一番上です。最初にここを止めないと車輪が開いてしまいます。そしてここだけ固定方法が異なります。フレームを巻き込んでから、車輪を固定します。こうすることで、摩擦力が増し、緩みにくくなります。ただし、最初は仮止めです。しっかりと固定する前に、下側の2か所を固定しましょう。
下側の2か所はどちらが先でも構いません。サドル側はサドルのレールにもストラップを通すことで、ずれにくく、緩みにくくなります。
3か所すべて仮止めしたら、上側から順番に本締めしていきます。本締めとはいえ、ほどほどの力で締め上げてください。本気で締め上げますと、車輪がゆがんでしまいますから。
一番上側の通し方が左端の画像です。続いて後ブレーキの下側、サドル側となります。
フレームと車輪が固定できたら、一度持ち上げてみてゆすってみてください。この時ガサガサするようですと、固定力不足です。ガサガサずれることで、傷がついてしまいます。
よく「自立しやすいように、横から見て八の字になるように」と解説してある場合もありますが、気にしなくて大丈夫。上の画像のようにきちきちに固定すれば、自然とそうなるはずですから。
袋に入れてストラップを通す。
続いて肩紐をかけましょう。まずはフロントギアの根本(BB)にストラップの一方を通しておきます。
ここでようやく輪行袋の本体部分を取り出しましょう。このように入れやすいような状態に広げてください。袋の底の内側部分に、リアディレイラーとサドルのイラストがプリントされていますので、その通りに自転車を置きます。
このときの注意すべきことは、肩にかけるストラップと、輪行袋の巾着部分のストラップが絡まないようにすることです。これらが引っかかると、輪行袋を上にあげようにも、どうにもならない時があります。
袋を上げていくときに、先ほど取り付けた肩掛け用のストラップを、袋の中ほどにある穴から通しておいてください。
そのストラップを、ヘッドチューブに通します。
この時ストラップの長さを調整しておくと、この後楽です。長さの目安は、ストラップをフロントフォークのエンド部分にひっかけた時に、ちょうどぴったりの長さになるくらいです。フロントフォークのエンド部分は、低いほう(より短くなる方)に合わせてみてください。身長や肩幅など体格によってそれぞれベストな長さは異なりますので、何度か試して、自分にベストな長さをあらかじめ覚えておくと、便利です。
袋を最後まで持ち上げて、巾着紐を蝶々結びすれば完成です。
電車の中では、くれぐれもほかの乗客の方の迷惑にならないよう、配慮してください。
よほどすいている場合以外、座らないくらいの覚悟でいておいてください。
車内がすいている場合、このように巾着紐を手すりなどに括り付けておくのもよいでしょう。ただし、完全に止まっているわけではありませんので、くれぐれも輪行袋のそばを離れないように注意してください。
組み立てるときはこの逆の手順ですが、走り出す前に
ブレーキ・スピードメーターが正常に動くかどうかは、必ず確認しておいてください。特にスピードメーターのセンサーやマグネットは、輪行袋の中で位置がずれやすいですから。
最後に、輪行を快適にするためには、
「15万円以上のロードバイク」がおすすめです。5万円クラスのクロスバイクで重量がおよそ12キロくらい。5万円クラスのマウンテンバイクだと重量がおよそ13キロくらい。はっきり言って、これは重いです。休まず歩けるのは200mくらいでしょうか。
10万円クラスの入門用ロードバイクで重量およそ9.5キロ。クロスバイクと比べれば十分軽いのですが、あと一息です。
15万円~20万円くらいのロードバイクになると、重量9キロ未満となり、十分軽い部類に入ります。
それ以上はまぁ、極めて趣味性が強くなりますので、このあたりが価格と価格のバランスの良いところかと思います。
輪行袋に車輪を付けるとか、傷がつかないように過度なパッドをつけるとかはあまり追求せずに、あくまで走っている時の快適性に軸足を置くのが、おすすめです。
輪行なんて、手段であって目的ではありません。目的は、快適に走ることです。輪行は裏方ですからね。